わたしは不器用で、なんとなく傍にいることしかできない、ダメなおんなのこなのだと思う。すきだとか、付き合ってくださいとか、そんなことはやっぱりどうしても言えなくて、でもすきだから、ずっとそばに居つづけている。

 いわゆる友達以上恋人未満という関係。

 結構ふたりでいることも、一緒にご飯食べたり遊びに行ったり、そんなこともするけど、それ以上の関係にはなれない。嫌われてはないんだろうなあって思うけど、亜久津がわたしのことをすきでいるかって言われたら、あんま自信ない。ねえ、この関係ってなんなの。わたしはあなたの何なの。
 聞いてしまいたい。でもそこで、友達だって言われたら、わたしはどうしたらいいんだろう。

 山吹テニス部が見える絶好隠れポジションの古びたベンチに、私と亜久津は並んで座っている。

、おい、聞いてんのか」
「え、ああ、うん、」
「嘘付け、聞いてなかっただろーが」
「ごめん」

 本人が目の前にいるのに、こんなくだらないことを考えてしまう。バカか、わたしは。

「いちいちくだらねーこと考えてんじゃねーよ、バカなんだから考え込むなバカ」
「・・・うん」
「しおらしいな、お前がそんな感じなの気持ち悪いから歯向かってこいよ」
「・・・うん」

 もやもやしてたらほっぺたをつねられた。痛い、って目で訴えたら、また「バーカ」って言われて、頭をぐちゃぐちゃにかき乱される。そしてその乱れた髪を適当に直してくれながら、また亜久津はバーカって言うのだ。

「お前は考えてる事が分かりやすすぎるんだよ。もう何も考えるな」
「だって」
「だって何なんだよ」
「・・・だって」

 めんどくさくなったのだろう。亜久津はタバコを取り出すと、それに火をつけてゆっくり吸い始めた。どう考えても不釣合いなppのけむりを吐き出す。このままでも幸せなのだ。分かっている。
 わたしはこのタバコと同じで、亜久津には不釣合いなのだ。分かっている。

、あっち向け」
「はあ?」

 あっち向けって言われたらそっち向きたくなる。何だよ、って思ってそっち向いたら、ヘッドバット食らわされた。

「いた・・・!」
「これで色々考えられなくなるだろ」
「わ、わかった、わかったから離して!近いちかいちかい!」
「黙れ」
「先に離して」
「離すかバーカ」
「・・・(とりあえず黙った)」
「何、涙目になってんだよ」
「頭突きが痛かった・・・んです・・・」
「・・・それは悪かったな」

 すっと亜久津の顔が離れていく。ちょっとだけ期待したのになあ、そう思うと、もう一度亜久津は近づいてきて、額に小さな呼吸音とともにキスを落とした。

「な・・・!」
「まあこれで少しはバカが治るんじゃねえの?」

 治るか!治るわけないだろう!でもびっくりしすぎて、何も言えない。ああ、どうしてくれるんだ、このどきどきを、こっちを治してよ。

「真赤だぞ、顔」
「うるさい」
「お前も俺にドキドキしたりすんのな。いっつも一緒にいて何も顔色変えねえから、そんな風に思われてないのかと思ってたぜ」

 亜久津は短くなったppを地面に投げ、足でもみ消す。
 背後で物音がした。

「と!いうことは晴れてコイビトってことなんだねえ~!」
「うっせえぞ千石!(どっから湧いてきやがった?!)」
「いやいや、この千石清純、長い間二人の関係を見守っておりましたが、今非常に嬉しいっ!ラッキー!」
「ちょ、なに、キヨ分かってたの?」
「分からないわけがない!南とか東方も知ってるよ」
「え、うそ、マジで」
「いやーちゃんがあっくんの彼女になるなんて想像つかなかったけどなァーいいなあ亜久津ぅ」
「黙れ殺すぞ」
「なになにー?黙ったら俺にもチューしてくれるのかなーあっくん?」
「! 死ね千石!」

20110624 亜久津フィーバーきたんですYO