「なんやー」
みんなが部活で一生懸命になってる中、私と顧問のオサムちゃんは日陰で寝そべってそれを見ている。
ぱこーん、ぱこーんというリターンの音の中に、銀さんの破壊音(どごーん)も混じってるこれが、四天宝寺の日常。
「もうすぐやね」
「何が」
「私達の引退」
「…せやな」
引退したら、もうこうやってオサムちゃんとごろごろしたり、お笑い講座うけたり、みんなのテニスが見れなくなるんだ…
そう思うと途端に切なくなってきて、
でもどっかで「笑わなきゃ」って思いがあって。
「ややこしい顔してんで、自分」
「ぅ、」
「あーハイハイ、泣きたいんやったら今センセーの胸に飛びこんどいでー」
どうやらオサムちゃんは冗談のようだったけど、私は本当にセンセーの胸に飛び込んでやった。
あ、意外とゴツイ胸板やん。
そしたらオサムちゃんはびっくりするほど優しく、私を抱きしめた。
「今のうちにいっぱい泣いとき。あいつらが負けたとき泣かん為にも」
「…ウチらは…負けへん…!」
「あーあーせやった。あーすまん、3コケシやるから堪忍」
「オサムちゃん、結局その『コケシ』て何なん?」
「自分コケシも知らんの?はー…今まで何をガッコで勉強しとったんや」
「いや、そんなこと言われましても」
「…ほら、そうして笑ろとったほうがええよ、」
ニっと笑って頭を乱暴に撫でる。
思わず目を瞑ったそのとき、おでこに柔らかい感触。
目を丸くして顔を見れば、
「ちゃんとしたちゅーは卒業までお預けや」