何も言えなかった。
ただ愛してたから。
真
夏
の
太
陽
夏の陽射しが真直ぐにアスファルトへと落ちる。
二人で黙り込んで、さほど時間は経っていないが、肌がジリジリと焼けていく感覚を覚えた。
唇がからからになっていくのが分かる。時がそっと過ぎて、生温い風が俺との間を駆け抜けた。
蓮二、別れよう。
そうに言われて、でもそれで良かった気がする。俺から言わなくて、良かったのだろう。
取り敢えずそう思い込む。
お前の顔を、そして唇を歪ませる結果になったのは、100%俺が原因だ。
テニスばかりの俺。も中学は部活をやっていたから、その苦しみを知っている。だから執拗に干渉したりしない。むしろ酷くドライな関係だった。
恋人なのかと聞かれて、違うと思ったことは一度足りともない。これが俺たちの愛だった。…いや、過去形にするのは良くないな。
すまない。
形式的な言葉だった。
それ以外、俺には何も言えなかった。
ここで愛を紡いで、何になる?そんなことは、互いに分かっている。だから、何も言えない。
それがセオリー。
ひらり、と短い髪を翻して、は去っていく。
引き止めない俺に、お前は内心怒っているのだろう?…ああ、分かっている。本当は別れたくなどないこと。
お前こそ、俺がを何年見て来たと思っている?
俺がそんな簡単に諦めるような男だとでも?
ま、しかし、少しは駆け引き出来るようになったんじゃないか?
夏の陽炎を見ながら、俺は細く笑うのだった。
20090721 思い付くまま電車内で書き起こした