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辿り着いた通信室はぐちゃぐちゃに潰れていて、何名かオペレーターが倒れていた。あのままここで通信室にいたら、わたしもこうなっていたに違いない。そう思うと寒気がした。わたしは瓦礫と化したディスプレイをかきわけて、サーバーを探す。本体はまだ生きていて、わたしは通信設備の復旧を図る。通信の会話を聞く限り、どうやら通路が開かずに隊員が本部に入れなくなっている。
しばらくすると医療班が来て、倒れていたオペレーターを運んだ。わたしは彼らを治せない。それが出来るのは医療班だけだ。

「新型の次は黒トリガーかよ!復帰早々クソめんどくせーのが来やがったな!」

諏訪さんの声が聞こえる。身体も特に異常はないらしい。良かった。本当に。わたしはお腹に力を入れて、トリオンの増加を図った。

「仮想戦闘モードON!!」

黒トリガーの弱点を掴むために、諏訪隊が取った選択は訓練室に敵をぶち込むことだった。訓練室ならトリガーの解析が出来る。さすが諏訪さんだ。けれど、身体を液体だけでなく、気体にも変形できる敵は、訓練室のコンパネに触れてしまい、さらには訓練室の外壁を破った。

「鬼怒田さん、悪いが壁を修復してくれ。こいつを逃がすわけにはいかないからな」
、できるか」
「やります。どなたか通信設備の復旧をお願いします」
「それは俺がやろう」
「南条さんお願いします」

正直、結構しんどいけどやるしかない。わたしのトリオンの半分くらいは諏訪さんにあげてしまった。それでもわたしは訓練室まで走って、壁を復旧させる。最近酷使しすぎたこともあって、わたしの中に内包していたトリオンが明らかに枯渇し始めたのを感じる。使用量に生産が間に合っていない。それでもわたしはエンジニア、本部の機能を止めないために働くのだ。
訓練室にいたブラックトリガー戦は、忍田さん指揮のもと、諏訪隊・風間隊の見事な連携で勝利を収めた。

、あちこち呼んですまないが、外壁損傷だ。かなり薄くなっていて危険だ。すぐ屋上までいけるか」
「いきます!」

鬼怒田さんの指示で、壁をなんとか形にしたあと、上階へと走る。屋上では冬島隊と三輪隊のスナイパーが、アフトクラトルの女と撃ち合っていた。通信の会話によれば、いま風間隊と諏訪隊が下から上がってきていて、彼らとの連携を図っている段階のはず。

「おー、いいとこに。お前、あれ撃っといてくれねえ?」

冬島さんが指す方向に、バンダーが五体見えている。しかも大きい。わたしが?と返事をする間もなく、当真さんがわたしを抱えて移動し、狙撃ポイントに寝そべらせる。有無を言わさない状況とはこういうことだ。

「俺が合図を出す。ふっとばねえように押さえといてやるから、しっかり狙え。お前ならまとめてつぶせるよ」
「…はい」

外壁は後だ。とにかくあのバンダーをなんとかしないと、外壁どうこう言っている場合じゃない。また壁を壊されたら本部内が丸見えだ。わたしは五体が重なる瞬間をしずかに待つ。

「いまだ!」

わたしが引き金を引いたアイビスは、大砲のような威力でバンダーに直撃、何とか撃退に成功した。

「いや~ほんとの狙撃はしびれるねえ!冬島隊に来いよ、って?」
「う、うぃっす」
「寝てんじゃねーぞ、お前の仕事はこっからだ」
「冬島さんキビシー…久しぶりに外に出たのに…」
「そっか。何年ぶりだ?」
「丸一年ですかね…」

ラービットは周りの隊員が撃破してくれたお陰で、屋上は難なく事を得た。わたしはその間に外壁を修復する。アフトクラトルは撤退していったと、忍田さんより全員に連絡が入った。